2023/11/25 22:44

バリ島のこと その3



SYMON’S スタジオに出会った次の日、私はクレヨンで描いたイラストを持ってSYMONさんに会いに行きました。

橋を渡り、スタジオに着くと昨日の女性スタッフが
「こっちよ」と奥の部屋へ案内してくれました。

そこは、わずかなオレンジ色の光で灯した洞窟のような部屋でした。
私は「HELLO」
とそこにいた白人の大きな体で眼鏡をかけたSYMON氏に声をかけました。
彼は低い声で「HELLO」と言いました。

私は間髪入れずに、「私は昨日あなたの素晴らしい絵に出会って、感動したので是非絵を習いたい」と言いました。

すると、
「君は今絵を持ってる?」
とSYMONさんは言いました。
私は持ってきたイラストを急いでみせました。

しばらくして、
「とってもいい絵だね、でも僕は紙には描かない!キャンバスに描くんだ!
そして僕は絵を教えない。見て盗みなさい。ここの庭にアトリエが二つある。一つ空いてるから使いなさい。道具は何でも使っていいよ。」
と言いました。

私はとても嬉しかったし、やったー!とバンザイしたかった。そんな気持ちを押さえてSYMON氏に丁寧にお礼を言いました。

「今から庭のアトリエを案内するから来なさい。もう一人、庭のアトリエで絵を描いてる男がいるから紹介しよう。」
と洞窟の部屋から出て、石段を降りて行きました。

庭には、プールがありその先に二つのアトリエが見えました。

奥のアトリエには、ドアの前に人の高さほどの大きさのキャンバスが立てかけてありました。
それを見て私は驚きました。黄色に塗られたキャンバスに赤で描かれた私がいたのですから!

「彼の新作、まるで君の顔にそっくりだろ。ヘイ!アンドリュー!
とSYMON氏が呼ぶと、そこから昨日のオーストラリア人の男の人が現れました!

!!!

驚いてる私に
「やぁ、また会ったね」
とアンドリューは言いました。

何が起こっているのかわからないけど、
「ありがとう、私、とても良いギャラリーを見つけちゃったみたい」
と挨拶しました。

ここからが私の画家生活の始まりなのです。