2023/12/19 04:32

奄美大島へ降り立った目的は、田中一村の作品をみて帰る事でした。

 

絵を描き始めてから「田中一村を感じさせる」と言われることが多くて、いろんな方から一村の画集を何冊かいただいて持っていました。

 

いつか本物の絵を見てみたい!そして私も彼のように南の島で静かに絵に向かいたいと思っていました。

 

そう、今でも南の島で小さなアトリエを持つ事が私の夢です。

 

奄美大島は降り立った時、沖縄よりも空気がしっとりとしていて、私に合っている感じがしました。

 

内海があって、アダンの樹があり、森があり、不思議な植物があって、小さくて綺麗な鳥達がいます。

 

次の朝、田中一村の作品を見に行きました。その帰りに私は市内をスケッチして歩いていました。

一村のように植物を描きたいと思い、東京ではあまり見かけない植物をスケッチしていました。

 

坂を上がったところにあるやに川という赤い橋の上から、川沿いに咲く青い花をスケッチしていると、品の良い綺麗なおばさまが来て

「これ、アガパンサスっていうのよ」といい

「うちの隣にも画家がすんでるのよ、うわさをすれば!ほらほら、来たわ」

といいました。

 

すると坂の下からその画家らしき人が来ました。

下駄を履いた色の黒いこわいくまさんのようなおじさんがカランコロンと来ました。

 

そのこわいくまさんのおじさんは、私のスケッチを見てまたコワイ顔をしました。

 

私が何も言わなかったら

「うーーん、面白い!」

とこわいくまさんのおじさんが言いました。悪い人じゃないかも・・・と思っていると

「あっちにダチュラが咲いている」

とカランコロンと行くので着いていきました。名前を聞こうとして

「あの、お名前・・・」と言うと、またコワイ顔をしたので、すかさず

「私、ホシカウミです!」

と言うと、

「ウミ?ヘンなの」

と言うので、

「名前だからしょうがないじゃない!」

ふんっ!

と言うと、こわいくまさんのおじさんは、急に打ち解けて仲良くなりました。

 

そしてちょっと待って、と言うとまたカランコロンと坂を下りてそのくまさんのおじさんは自分の描いた絵を持ってきて見せてくれました。

もの凄く緻密な絵でした。素直に上手い絵だな!と思って、その絵から暖かい人柄もわかりました。

 

このこわいくまさんのおじさんはUさん。Uさんに出会ってしまったがために私は奄美大島を本当は3日で帰るつもりが、そのまま3ヶ月いることになりました。

 

Uさんは顔が広くて、美術協会会長さんや、市役所の人、郵便局長、街のいろんなお店のマスター、など、たくさんの人に紹介してくれました。

 

そして私はまた郵便局の中に大きな壁画を描いたり、ホテルのビヤホールの壁画、マングローブパークの壁画、木工センターや、いろんな施設に大きな絵を描いたり、次から次へと仕事をこなしました。

南海日日新聞という新聞に出たり、奄美テレビで「星加海 奄美を描く」という特番も作ってもらいました。

 

島では、昼は喫茶店、夜は飲み屋さんが情報交換の場所で、新宿のゴールデン街のように、人がどんどんつながる場所でした。

 

途中で母を奄美大島へ旅行によびました。ホテルの壁画のギャラで飛行機のチケットを買い、部屋もホテルの方にお願いしました。

 

母と浴衣を着て、ホテルのビアガーデンから見た花火はとても綺麗でした。澄んだ深い青い色の夜空に上がるたくさんの色が開いては散る花火は思い出の一つです。

 

奄美大島で体験したことは、黒鯛釣り、草木染め、撃ち取った猪の鍋、金ハブ酒、カヤック、黒糖焼酎飲み比べ・・・。

なんだか渋い遊びばかりですが、島以外ではできない事を体験させていただいた感じがします。皆様に感謝

 

7月のある日、新聞記事をみた鹿児島のホテルのオーナーが「是非うちに泊まって絵を描いてほしい」と連絡がきました。

 

私は与論島に行きたかったので、与論島経由で鹿児島へ旅立つ事に決めました。

 


 アガパンサス=ギリシャ語で愛の花 

 (愛の告白、プロポーズにも!)