2024/01/13 07:56

日本橋のギャラリーで、「潮騒」をタイトルに個展を開催した時、
そのギャラリーのご近所さんで画商さんのMさんと出会いました。

私の作品に何かを感じたらしく毎日顔を出してくれました。

Mさんは当時70才ぐらいだったかと思います。札幌と日本橋を行き来しながら、画商をされているすっきりとした都会的なおじさまでした。

シャンソンが好きでとても詳しく、
毎夜銀座のシャンソニエに通っている方でした。

個展開催中のこと、
「海ちゃんと仲良くなれそうな子がいるから観においで」と
Mさんが当時吉祥寺にあったベルエポックという老舗のシャンソニエに私を連れて行ってくれました。

実はその日、私の誕生日だったので地下鉄で打ち明けたところ、
「なんで彼氏と過ごさないの?」とMさんはびっくりされました。

「私、彼氏いません。」というと、
「芸術家なんだからたくさん男作ればいいじゃん!」と、
どっちが若者なんだかわからない会話で笑いました。この話はずっと後になってもMさんが私を誰かに紹介してくださるときに、話す十八番でした。

吉祥寺にあったベルエポックという老舗のシャンソニエは、南口を降りてすぐの雑居ビルの上にありました。

カラコロンとドアを入ると、照明を落とした店内で、ベルベット調のソファやカーテン、重厚な木のテーブル、オレンジに灯るランプの光、ステージにグランドピアノが置かれ、古き良き巴里のシャンソニエの雰囲気を醸し出していました。

歌い手さんは3人程、ピアノの方が1人。
その日によって入れ替わりいろんな方が歌います。その中にはTVに出演されている有名な方もいらっしゃいました。

その日Mさんが私に紹介してくださった方は、少し年上のとても可愛くて、素敵な女性の歌い手さんでした。

彼女がシャンソンを歌うのを聞いて、私はすぐに好きになりました。


シャンソンを聞きに来ているお客さんは、皆さん何処かの社長さんらしく、一人で来て、ウィスキーやワインなど飲んで歌に浸っている様子でした。

なんて優雅で贅沢な時間なのだろう!
私もできる限りシャンソニエに来よう!
とその夜、心に決めました。

Mさんはその後も必ず個展に来て下さり、その度に何人かの歌手の方を連れて来ては、紹介してくれました。

歌手の方のCDジャケットを担当させてもらったり、私がラジオ出演した際にその方たちの曲をかけたり、お互いに仕事の宣伝をし合う楽しい関係を築きました。


何年か後、鴨川にあるMさんの別荘のマンションに絵を描かせて貰ってしばらくしてその素敵なMさんも、天国へ。

私の世代はぎりぎり、Mさんのように芸術家や、歌手や、俳優などの卵をちゃんと見極めて、応援してくださる方に出会えた方だと思います。

その時いただいた言葉や目に見えないたくさんの宝物はずっと心にあります。
だから私はどんな事があっても自分を信じて、絵をずっと続けられるのだと思います。
出会いに感謝☆☆☆