2024/01/21 16:52

新宿ジャズBARのお話しです。

神保町のアルバイトがない日、昼間絵を描いて、夕方にのそのそと支度をして新宿のジャズバーに行くのでした。

小さなハンドバッグに小さなスケッチブックとペンを入れていました。

東口の狭い地下につづく階段をタンタンタンと降りていくと、オレンジ色の灯りの中、ジャズのレコードがかかっているお店PEPEがありました。

「いらっしゃい」とエプロンをした白い髭のマスターが言って、「海ちゃんは今日は何処帰り?」なんて話しだします。

そこではだいたい好きなジャクダニエルを飲んで、レコードを聴いていました。




雪が降ってるある夜シャンソンを聴きに行った帰り道、PEPEに寄った私はKさんと出会いました。
彼はマスターと若い頃からの新宿の友達でした。

私は彼について行って、新宿のジャズバーをたくさん知ることができました。
その頃あった地下の何軒かのジャズバーや、
ゴールデン街の古くからある良いお店に梯子したり、
どのお店も魅力的な絵になるマスターやママがいて、胸がドキドキして楽しかった。



神保町の文壇バーのアルバイトも彼の紹介でした。

Kさんは私の個展には、大きな長い白い箱を持って現れました。
中には真っ赤な高級な薔薇の花束が入っていて、
大きな絵を何枚も買ってくれました。

私はKさんに夢中でもいました。
私は若すぎて、片思いでした。
彼が4年後になくなって、会わなくなっても、心の隅っこで好きで宝物でした。

ずっと大切にしてきて、ずっと秘密だったけれど、今はその事も、思い出にできる人がやっとできたので、思いきって書いてみました。



「京都の三十三間堂は、ジャズだと思うんだよな。」
と、京都の旅を勧めてくれたのもKさんでした。
だから私は京都へひとり旅へでたのです。

次は京都の話。