2024/03/01 05:13
子育て前までは、誰かにあって挨拶といえば、
「海ちゃん元気?今度はどこいくの?」
というフレーズでした。
それで例えば、
「京都に行こうと思ってるんだよね」
と私がいうと
「じゃあ、○○って街に彫刻家の○○さんがやってるお店があるから寄ってみなよ」
とか、
「京都に行ったら○○ってお店があって、いいお酒があるよ」
とか教えてくれるのです。
これが個展会場だと、何十人もの京都情報が一度に聞くことができて楽しいのです。
だいたいそれらのおすすめは聞いておくと、旅先で歩いているうちにサラサラと目に入ってくるものなのです。
そんな感じでスペインの旅もまたはじまったのでした。
神保町の個展が終わった秋の日、
(スペインに行きたいなー)
なんて漠然と思いながらいつものように
馴染みの吉祥寺の本屋さんにぶらっと訪ねた時のことでした。
「海ちゃん、今度どこいくの?」と店主。
「なんかね、スペインに行きたいなーって思ってるんだけど」と私。
「それなら、画家の堀越千秋さんのこと海ちゃん知ってる?」と店主。
「知らない!どんな人?」と私。
「スペインに30年住んで、絵を描いてるんだよ。絵はこういう絵」
と店主は、堀越さんの抽象画を見せてくれました。
私はいっぺんにその絵が気に入りました。
なんて濁りのない心を持った画家なんだろう!
素敵!!
この土の香りのする色彩と、洗練された線の秘密はスペインにあるに違いない!
と強く心に惹かれました。
そしてその帰り、個展が終わったばかりの神保町の檜画廊に行きました。
堀越さんの話を私がすると、画廊のオーナーの彼女は、
「あら、海ちゃん知らなかったの?堀越千秋さん、私の幼馴染みよ。」
と言ったのです。
「来月うちで展示あるわよ。観においで。」
ということでした。
これはもうスペインに行くしかない!
と嬉しくて跳びはねるように家に帰ったのを覚えています。
そして、偶然その秋に日本に帰国していた堀越さんと彼の展示でお会いしました。
笑い声が大きくて、おじさんなのに子供が見え隠れしてる椎名誠さん似の方でした。
「私スペインに行きます!」
というと
「来なさい、来なさい。」
と言ってくださいました。
私は思っていることを説明するのがとても下手なので、大事な人に伝える事があるときはいつも前の日に思いや、自分のやりたいことを書いた手紙を持って行きます。
その時の手紙の内容は、
堀越さんの絵がとても好きになったので、その秘密がスペインにあると感じ、自分のスペインを探しにスペインに行きたいのだというようなことを書いたと思います。
そうして2006年の冬、ワインと情熱の国スペインへ旅立ったのでした。